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「夢売るふたり」

 

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本当は旅日記の二日目の予定だったけど、先にさっき観てきた映画について。

映画に詳しい、信頼する男友達は「観る価値なし」くらいの評価で、同じく映画に詳しい目上のお方からは「藤村さんの感想が聞きたい」とのことで、

目上のお方に来週辺りお会いする予定なので、急きょ観に行ってきた。

公式HPはこちら・・・

http://yumeuru.asmik-ace.co.jp/

 

 

ストーリーとかなんとかより、今思うことを断片的に書きます。

最初は、シリアスなのかコメディーなのか、とにかく中途半端な印象で、どうなることかと思っていたけれど、途中から引き込まれた。

西川美和監督の映画は「ゆれる」で衝撃を受け、そのほかは観てないけれど、『ディア・ドクター』の原案小説である「きのうの神さま」を読んだ時、天才!と思った。
なんというか、西川さんの描く作品は、ふだん刺激されないような心の筋肉を刺激されるようで、ふだん使わない頭や心の部分がちくちくちくちくする。
『夢売るふたり』は、途中からおなかにずーんと来るような内容だった。

これは、男と女で印象がずいぶん違うと思う(実際賛否両論)。

私は信頼している友達が、ある意味酷評をしてくれたおかげで、期待せずに観ることができた利点もあったと思う。

想像していた内容と違っていた。

もっと男と女の深層心理みたいな話かと思っていたけれど、色々感じさせられた。

それが西川監督のすごいところだと思う。

男だとか女だとか超えて社会を描き出し、ものすごくマニアックな部分や感情をあぶり出す。

その偏愛とも言える「こだわり」こそが、作家性だと思う。
支配だとか共依存だとかジェンダーだとか色々感じた。


なんというか、私もその一人だけれど、人間って「さびしい」「かわいそう」な生きものだなあと思った。ふだん「さみしい」を選択するけど、この映画で思った感情は「さびしい」。

男は女に甘いし、女は男に甘いので、評価が分かれるんじゃないかと思うけど、かわいそうな何かを抱えた人って、かわいそうな人に反応するというか、弱いんじゃないかな。

阿部サダヲ演じる主人公は、結婚詐欺と言いながら、かわいそうな人に見事に純粋に反応してる。

私は、この映画の中では、ウエイトリフティングの選手役を演じた江原由夏さんが秀逸だったと思う。今検索すると、オーディションでこの役を得た劇団所属の女優さんらしいけど(訓練の結果、実際の大会に出るまで強くなったそうで)、すごく素直で素朴で、私は彼女の演技や表情を見るだけで泣けてきてしまった。

もう一人、こちらはお名前を知っていたけれど、安藤玉恵さん(今再び検索して納得「ポツドール」ね~)の演技も良かった。

2人ともしっかりした女優さんなのに、すごくいい意味で素人っぽくて素で、いるいるこういうひと~~という感じなのだ。

2人とも美人とは言えないだろうけど、独特の存在感。
阿部サダヲも松たか子も、目の演技と言うんでしょうか、キラキラ輝いたり曇ったり、ぐいっと引き込まれる俳優さんだった。

伊勢谷友介もアッパレだった。

 

監督の西川美和さんは、早稲田で二つ年下くらいに当たる。

私の中では、椎名林檎と重なる。つくり出すものに性別を超えたクールさを感じる。

こうして今、私が何か書かずにいられない、という感情を与えるということ自体が、映画の成功だと思う(少なくとも私にとっては)。

 

原発や震災を描かずにはいられない表現者に共感する一方で、3.11とは全く無関係なお話を構築し続けられる作家に尊敬もするし、どうしてもささやかな軽蔑も感じてしまうこの頃。

この日本で、今後同世代の西川監督が何を描いていくかにも興味あるし、やっぱり私もがんばらなくちゃ、かな~~~
(『きのうの神さま』の直木賞候補の頃、同じ版元のポプラ社が盛り上がってるの見てたし、あーでもね、それも含めて、感性の違いというか、どうしても「つくりごと」に没入できない今の自分があります)

今、友達に教えてもらった宇多丸のこの映画の話聞いてたら、すごく納得。見事に感想がバラバラで、それこそおもしろいと同時に、宇多丸さんの言うことにかなり共感。確かに「そんな展開(反応)あり得ない!」の連続ではあった(私にとってのいちばんの違和感は、男と女の肉体と肉体が初めて触れる前の間・・・その間は違うだろう、と3回くらい思ってしまった)。「監督のあざとさ」を感じるような演出も、まあ、そんなもんだろうというか、私は生々しくてなんぼ!って思っちゃうので、流していた。
とにかく、観て良かった!


☆ライムスター宇多丸のシネマハスラー(Podcast)http://podcast.tbsradio.jp/utamaru/files/20120922_hustler.mp3

☆西川監督インタビュー http://www.webdice.jp/dice/detail/3638/

 

 

 

 

 
by hihararara | 2012-10-03 06:10 | 映画
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